

標的神経細胞へ高精度・高濃度で薬剤を届け、脳や脊髄の中枢神経系に効率的に送達できる革新的なドラッグデリバリー技術です。
神経疾患は、神経細胞の機能が徐々に失われ、運動・感覚・記憶などに障害をもたらす疾患群であり、その多くはいまだ根本的な治療法が確立されていません。特にALSやアルツハイマー病のような神経変性疾患は、特定の神経細胞が変性することで様々な障害を引き起こします。そのため、これらの神経細胞を標的とした治療介入が極めて重要ですが、治療法の開発は非常に困難です。その要因の一つが、標的神経細胞への薬剤送達という大きな技術的課題です。現状の治療法では、正常な細胞に副作用を起こしてしまう一方で、病変細胞には十分に薬が届かず、治療効果が限定的となっています。
私たちのNeuron DDSは、標的神経細胞に薬を確実に届けるために設計された、抗体を利用したドラッグデリバリー技術です。
神経と筋肉の情報伝達に用いられるシナプス小胞リサイクリングという生体の仕組みを利用して抗体は神経末端に取り込まれます。神経内に取り込まれた抗体は、軸索と呼ばれる神経の内部輸送路を通って、脊髄や脳幹にある神経細胞体まで運ばれます。このシステムにより、中枢神経系のバリアを迂回して、薬剤を効率的に中枢の神経細胞内へ届けることが可能となります。
従来困難だった神経変性疾患の治療法開発を加速させ、有効性と安全性を両立した新たな治療選択肢の実現を目指します。
運動神経は、脳や脊髄から末梢の筋肉へと運動指令を伝達する細胞であり、中枢神経系と末梢神経系をつなぐ情報伝達経路として絶え間なく電気信号を行き来させています。
私たちはこの情報伝達経路を薬剤送達手段として活用することで、Neuron DDSを確立しました。
Step 1 Neuron DDS抗体と薬剤(オリゴヌクレオチドや低分子化合物など)を組み合わせることで神経細胞標的治療薬を作製し、静脈投与を行います。
Step 2 Neuron DDS抗体は、シナプス小胞内に発現しているSynaptotagmin 2(SYT2)というタンパク質をターゲットとしています。
神経が信号を送る際、シナプス小胞は神経伝達物質を放出するために一時的に開き、内部が細胞外に露出します。このときNeuron DDS抗体は露出したSYT2に素早く結合します。
SYT2に結合したNeuron DDS抗体は、その後シナプス小胞リサイクリングに乗じて神経細胞内へと取り込まれます。
Step 3 神経末端から取り込まれたNeuron DDS抗体は、神経内の情報伝達経路(軸索)を逆行して脊髄や脳幹の奥深くに位置する運動神経細胞体へと薬剤を届けます。さらに、中枢神経系全体に分布するSYT2を有する多様な神経細胞にも薬剤が到達し、広範な神経ネットワークへの治療介入を可能にします。